コーヒーにハマると、たいてい「沼」が見えてきます。僕も例外じゃなくて、豆を変え、ミルを買い替え、ドリッパーを揃え……と順番に課金していきました。それでも、毎朝のカップがどこか決まりきらない。最後の最後に手をつけたのが水で、結局それがいちばん効きました。今日はその話をします。
器具より先に、味が決まらなかった日々
最初は道具の問題だと思っていました。挽き目が粗いのか、ドリッパーの形状か、注ぎ方か。一つずつ変えては「うーん、惜しい」を繰り返す。悪くはないんだけど、こう、芯のところで雑味がうっすら残る感じが抜けない。お金と手間はそれなりにかけているのに、決定打がないままでした。
今になって思えば、僕はずっと枝葉ばかりいじっていたんですよね。幹を疑っていなかった。
コーヒーは、ほぼ水でできている
当たり前の話なんですが、淹れたコーヒーの中身は大半が水です。豆から抽出した成分は、全体から見ればごくわずか。つまり味のベースは水そのもので決まっている、という単純な事実に、僕はわりと長いこと気づかないふりをしていました。
試しに、いつもの水道水をやめて浄水したものと、市販のミネラルウォーター(軟水)でそれぞれ淹れてみたんです。すると、あの薄く残っていた雑味がふっと引いて、まろやかさが前に出てきた。塩素のにおいを抜くだけでも口当たりが変わって、正直ちょっと拍子抜けしました。何万円ぶんかの試行錯誤を、安い浄水ポットが一晩で追い抜いていったわけです。
お金をかける順番が、たぶん逆だった
反省として残ったのは、投資の順番です。僕は「高い器具を買えば味が上がる」と思い込んでいたけれど、実際に費用対効果が高かったのは、もっと地味で安い部分でした。
- 水を整える(浄水・軟水に替える)
- 湯温を見直す
- 挽き具合を一段だけ調整する
このあたりは、ほとんどお金がかからないか、かかっても数百円〜千円の世界です。土台が揺れているのに上物を豪華にしても、味は決まらない。順番、大事でした。
湯温と蒸らし、という地味な効きどころ
水の次に効いたのが湯温です。沸騰した直後のお湯をそのまま注ぐと、どうも角が立つ。一拍おいて少し落ち着かせてから注ぐと、苦味の出方が穏やかになりました。温度計を出すほどでもなくて、「ケトルの口から湯気が勢いよく上がるのが収まったあたり」くらいのゆるい目安で十分です。
もう一つは蒸らし。最初に少量だけお湯を含ませて、粉全体がふくらむのを二十秒ほど待つ。これをやるかやらないかで、後半の抽出の素直さが変わります。派手さはないけれど、確実に効く基本でした。
計測沼の入り口で、立ち止まる
ここで危なかったのが、再現性を求めすぎて計測沼に片足を突っ込みかけたことです。スケールに乗せて秒数を計り、温度を測り、注ぐ速度まで記録し始めたら、もう朝の飲み物じゃなくて実験になっていました。たしかに精度は上がる。でも続かない。
なので、毎朝ラクに繰り返せる「ほどほどの再現性」で手を打ちました。水は浄水、お湯は一拍おく、蒸らしは粉がふくらむまで。これくらいなら寝起きでも回せます。趣味は、続けられる範囲に収めてこそだと思うので。
結論:いちばん土台の要素を疑う
趣味を上達させたいとき、つい新しい道具や難しいテクニックに手が伸びます。でも近道はたぶん逆で、そのジャンルでいちばん土台になっている要素を一度疑ってみることなんだと思います。コーヒーにおける土台は、豆でも器具でもなく水でした。何かが伸び悩んでいる人は、自分の「水」にあたるものが何か、ちょっと考えてみると面白いかもしれません。